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音響透過損失:静かな住まいづくりの鍵
建物の中で静かで心地よい空間を作るためには、音の伝わり方を理解することがとても大切です。その指標となるのが音響透過損失です。音響透過損失とは、壁や窓、床といった建物の各部分が、どのくらい音を遮断できるかを示す値です。音は空気中を波のように伝わっていきますが、壁などの物にぶつかると、一部は跳ね返り、一部は吸収され、そして一部は通り抜けていきます。この通り抜ける音の量が少なければ少ないほど、遮音性能が高いということになり、音響透過損失の値は大きくなります。
音響透過損失は、音の大きさを表す単位であるデシベル(記号はdB)を使って表します。この数値が大きいほど、遮音性能が高く、音をよく遮断できることを示します。例えば、壁の音響透過損失が30dBであれば、壁を挟んで音が1/1000に減衰するということです。50dBであれば、音は1/100000にまで減衰します。つまり、音響透過損失の値が10dB上がるごとに、音のエネルギーは1/10に減少していくのです。
静かな住まいを作るためには、外からの騒音はもちろんのこと、室内で発生する生活音にも配慮しなければなりません。例えば、ピアノの音や話し声、テレビの音などが、隣の部屋や階下に伝わらないようにするためにも、音響透過損失の高い壁や床を選ぶことが重要です。建物の設計段階で、適切な材料を選び、構造を工夫することで、音響透過損失を高め、快適な音環境を実現することができます。より静かな空間を求める場合は、音響透過損失の高い建材を選ぶとともに、窓に二重サッシを採用する、壁の中に吸音材を入れるなどの工夫も有効です。