書院造り

記事数:(1)

建築

数寄屋造りの魅力:侘び寂びの空間

数寄屋造りは、安土桃山時代の終わりごろ、茶の湯の文化が花開くとともに発展した建築様式です。生まれたばかりの頃は茶室のことを指す言葉でしたが、時が経つにつれて、住まい、料理屋などにも使われるようになりました。その名前の由来は「数寄」という言葉で、風流を好み、並外れて強いこだわりを持つという意味が込められています。茶室から発展したという生い立ちから、飾り気がなくとも洗練された美しさを追い求める心が根底にあります。 金銀をちりばめたような派手な装飾は避け、木や土、竹、紙といった自然の素材の持ち味を活かした簡素な造りが持ち味です。たとえば、柱には磨き丸太が使われ、壁には土壁が塗られ、屋根には草葺きや杮葺きが用いられることが多いです。また、床の間には、掛け軸や生花が飾られ、季節の移ろいを感じさせる演出がなされます。窓は光を柔らかく取り入れるために、障子や格子戸が用いられます。これらの要素が組み合わさり、落ち着いた雰囲気を作り出しています。 数寄屋造りは、わびさびに通じる静かで奥深い魅力をたたえています。わびさびとは、質素で静かな中に、深い美しさや趣を見出す日本の美意識です。数寄屋造りの簡素な造り、自然素材の風合い、そして静謐な空間は、このわびさびの精神を体現しています。現代の慌ただしい暮らしの中で、数寄屋造りの空間は、心を落ち着かせ、安らぎを与えてくれる特別な場所と言えるでしょう。近年、日本の伝統的な美意識への関心の高まりとともに、数寄屋造りは改めて見直されています。現代建築にもその要素が取り入れられるなど、その影響は様々な形で広がっています。