
コンクリートを守る縁、かぶり厚さとは
鉄筋コンクリート構造物において、かぶり厚さは建物の寿命を左右する重要な役割を担っています。鉄筋コンクリートは、鉄筋の引張強度とコンクリートの圧縮強度を組み合わせた構造です。鉄筋はコンクリート内部に埋め込まれており、通常の状態では、コンクリートの高いアルカリ性によって酸化から守られています。しかし、時間の経過とともにコンクリートは空気中の二酸化炭素と反応し、中性化が進行します。中性化したコンクリートはアルカリ性を失い、鉄筋の酸化を防ぐことができなくなります。また、地震や乾燥収縮などによってコンクリートにひび割れが生じると、そこから雨水や塩分を含んだ水分が侵入し、鉄筋の酸化を促進する可能性があります。酸化、つまり錆びた鉄筋は体積が膨張し、周囲のコンクリートに圧力をかけます。この圧力によってコンクリートにひび割れや剥離が発生し、構造物の強度が低下してしまうのです。かぶり厚さとは、コンクリート表面から鉄筋までの距離のことです。このかぶり厚さは、鉄筋を外部環境から守り、中性化やひび割れによる鉄筋の酸化を防ぐための重要な防護壁として機能します。十分なかぶり厚さを確保することで、鉄筋が酸化の影響を受けるまでの時間を稼ぎ、構造物の耐久性を向上させることができます。さらに、かぶり厚さは火災時の耐火性向上にも大きく貢献します。火災が発生すると、高温にさらされたコンクリートは強度を失います。しかし、適切なかぶり厚さが確保されていれば、鉄筋が高温に直接さらされるのを防ぎ、構造物がすぐに倒壊するのを防ぐことができます。このように、かぶり厚さは構造物の安全性を確保し、建物の寿命を延ばす上で必要不可欠な要素と言えるでしょう。