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防犯・防災

クロルピリホス:使用禁止の殺虫剤

クロルピリホスは、かつて様々な場所で広く使われていた、虫を駆除するための薬です。リンを含む有機化合物の仲間で、その強力な効き目から、農家で育てている野菜や果物などを守るだけでなく、ゴルフ場や公園、さらには家の中のシロアリ退治にも役立てられてきました。 農作物を害虫から守るという点では、クロルピリホスは非常に効果的でした。稲や麦、野菜、果樹など、様々な作物に付く多種多様な害虫を駆除することができ、農家にとっては心強い味方でした。また、シロアリのように木材を食い荒らす害虫にも効果を発揮し、家屋を守る上でも重要な役割を担っていました。公園やゴルフ場といった公共の場でも、蚊やハエ、ダニなどの駆除に用いられ、人々が快適に過ごせる環境づくりに貢献していました。 しかし、その高い効き目の裏には、人体への影響という大きな懸念がありました。クロルピリホスは、虫の神経系に作用して殺虫効果を発揮しますが、同じように人間の神経系にも影響を与える可能性が指摘されたのです。特に、発育段階にある子供への影響が懸念され、神経系の発達を阻害する恐れがあるという研究結果も報告されました。 これらの懸念を踏まえ、世界各国でクロルピリホスの使用が見直され、現在では多くの国でその使用が厳しく制限、もしくは禁止されています。日本では、人の住む建物内での使用は全面的に禁止されており、農作物への使用についても厳格な基準が設けられています。かつては頼もしい存在だったクロルピリホスですが、人体への影響を考えると、その使用には慎重であるべきです。より安全な代替品の開発や、害虫駆除のための新たな方法の確立が求められています。