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竣工図の重要性:建物のカルテ
建物が完成したとき、最終的な状態を正確に記録した図面のことを竣工図と言います。これは建物のいわば健康診断記録のようなもので、その後の維持管理や修理工事を行う上でとても大切な役割を担います。
建物は、最初に設計図に基づいて作られます。しかし、実際に工事を進めていく中で、現場の状況や様々な都合によって、設計図とは異なる変更や追加が必要になることがよくあります。特に、配管や電気配線などは、現場での調整が必要となる場合が多く、設計図通りにいかないことが少なくありません。竣工図は、こうした現場での変更点を反映させた、建物の完成形を示す正確な記録です。
竣工図があれば、将来、建物を修理したり、設備を新しくする際に、どこに何があるのかをすぐに把握することができます。例えば、壁の中に隠れている配管の位置や、床下の配線の経路などが正確にわかれば、工事をスムーズに進めることができ、時間や費用の無駄を省くことができます。また、思わぬ事故やトラブルを防ぐことにもつながります。
逆に、竣工図がない場合はどうなるでしょうか。建物の内部構造がわからず、どこに何があるのかを調べるために多大な時間と費用がかかることになります。壁や床を壊してみたら、予想外の場所に配管や配線があった、というような事態も起こり得ます。最悪の場合、誤って配管や配線を損傷させてしまい、大きな事故につながる危険性もあります。
このように、竣工図は建物の維持管理にとって非常に重要です。建物の寿命全体を考えると、竣工図の作成は欠かせないと言えるでしょう。