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木の太さを測る:胸高直径の話
木々の太さを測る時、基準となる位置はどこでしょうか。木の幹は、根元は太く、上に行くほど細くなるため、同じ木でも測る場所によって直径が大きく異なってきます。そこで、木の太さを比較したり、成長を記録したりする際に用いられるのが「胸高直径」という考え方です。
胸高直径とは、人が立った時の胸の高さあたりで木の幹の直径を測る方法です。地面からおよそ1.2メートルの高さを基準にしています。なぜ、この高さが選ばれたのでしょうか。まず、木の根元部分を測ると、地面の起伏や根の張り出し、あるいは瘤などの影響を受けやすく、正確な値を得るのが難しいという問題があります。また、木の上の方の高い位置で測ろうとすると、作業が危険になる場合もあります。はしごを使ったり、木に登ったりする必要があるため、安全面で問題があります。さらに、高い位置になるほど枝分かれが多くなり、幹の直径を正しく測ることが難しくなります。
これらの問題を避けるため、安全に、かつ比較的容易に測定できる高さとして、人の胸の高さが選ばれました。日本では、地面から1.2メートルと定められています。この高さであれば、特別な道具を使わずに、ほとんどの人が容易に測定できます。
一方、海外では、この基準となる高さが少し異なっています。例えば、アメリカでは1.37メートル、ヨーロッパでは1.3メートルと、日本より少し高い位置で測定しています。これは、それぞれの地域の平均的な体格や森林の状況などを考慮して決められたと考えられます。このように、胸高直径は世界共通の考え方ですが、具体的な測定位置は地域によって多少の違いがあるのは興味深い点です。木の太さを測るという単純な行為にも、様々な工夫や地域の特性が反映されていると言えるでしょう。