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住まいの敷居:その役割と歴史
敷居とは、家屋の出入り口や部屋と部屋を隔てる際に、床に水平に渡された横木のことです。 建具の下枠としての役割を担い、溝が彫られていることで、障子や襖を滑らかに開閉することを可能にします。古来より日本の家屋において、なくてはならない部材として使われてきました。
敷居の役割は、単に物理的な仕切りとしてだけではなく、屋内と屋外、あるいは神聖な場所とそうでない場所を区切るという象徴的な意味合いも持っていました。そのため、敷居をまたぐ際には様々な作法や言い伝えが各地に存在します。一礼をする、軽く足を触れるといった行為は、敷居に対する畏敬の念や、家を守るものとしての意識を表していると言えるでしょう。
材質としては、耐久性や耐水性に優れた木材が用いられることが一般的です。 昔ながらの住宅では、栗や欅などの堅木が使われてきました。近年では、耐久性やメンテナンスの容易さから、樹脂製や金属製の敷居も普及しています。
敷居には様々な種類があり、用途や設置場所によって使い分けられます。例えば、玄関の上がり框に取り付けられる上がり框敷居、和室の入口に用いられる床敷居、浴室の入口に設置される浴室敷居などがあります。また、バリアフリー化に伴い、段差をなくしたフラットタイプの敷居も増えてきました。
敷居は、日本の伝統的な建築様式において重要な役割を果たしてきた部材です。物理的な機能に加え、文化的、精神的な意味合いも併せ持つ存在として、現代の住宅においてもその価値が見直されています。家の顔とも言える玄関の敷居は、家の格式を表す重要な要素と言えるでしょう。そのため、敷居の素材やデザインを選ぶ際には、家の雰囲気や機能性に合わせて慎重に検討することが大切です。