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取引の安全を守る表見代理
「表見代理」とは、本来は代理の権限を持っていない人が、まるで権限を持っているかのように見せかけて他人と取引を行い、取引相手が代理の権限があると信じて、かつ悪意なく取引した場合に、その取引の効き目を本人に及ぼすという制度です。簡単に言うと、代理の権限がないにもかかわらず、本人のように行動した人が他人と契約を結んだ場合、本人に責任が生じる可能性があるということです。
この制度は、取引の安全を図り、善意の取引相手を守るために設けられました。代理の権限があるかどうかを毎回確認するのは大変な手間がかかり、取引の速度も遅くなってしまいます。そこで、このような制度によって、相手が安心して取引できるように配慮されているのです。
例えば、AさんがBさんの土地を売却する権限がないにもかかわらず、さも権限があるかのように振る舞って、Cさんと売買契約を結んだとします。この場合、CさんがAさんに代理権があると信じており、かつ、Aさんに代理権がないことを知らなかった、つまり善意であった場合、Bさんはこの売買契約を有効としなければならない場合があります。これが表見代理です。
表見代理が認められるためには、いくつか条件があります。まず、代理人と名乗る人に代理権がないということが前提です。次に、相手方が代理権があると信じたことに正当な理由が必要です。つまり、客観的に見て、代理権があると信じるのも無理はないような事情が必要です。さらに、相手方が善意無過失であることが必要です。つまり、相手方が代理権がないことを知らなかっただけでなく、知らなかったことに落ち度がないことが求められます。これらの条件がすべて満たされた場合にのみ、表見代理が成立し、本人に取引の効き目が及ぶことになります。
表見代理は、商取引の円滑化に大きく貢献する一方、本人にとっては大きなリスクを伴う制度でもあります。そのため、本人は、代理権を適切に管理し、無権代理が発生する可能性を最小限に抑えるよう注意する必要があります。また、取引相手も、取引の相手方が本当に代理権を持っているのかどうか、慎重に確認することが重要です。