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土地の価格:一物四価を理解する
一物四価とは、同じ土地に四つの異なる価格が存在することを表す言葉です。これらの価格は、売買、相続、税金など、それぞれの場面で異なる目的を持ち、算出方法も異なります。一つ目は実勢価格です。これは、市場で実際に取引されている価格、つまり売買される価格を指します。需要と供給の関係に影響を受け、変動しやすい特徴があります。二つ目は公示価格です。国土交通省が毎年1月1日時点の標準的な土地の価格を調べて公表するものです。土地の取引や鑑定評価の指標となる重要な価格です。一般的に実勢価格より低い傾向があります。三つ目は路線価です。道路に面する標準的な土地の1平方メートルあたりの価格で、国税庁が毎年7月1日時点の価格を公表します。主に相続税や贈与税を計算する際に利用されます。路線価方式と呼ばれる簡易な評価方法で算出されるため、土地の形や接している道路の状況などが適切に反映されない場合もあります。四つ目は固定資産税評価額です。市町村が毎年1月1日時点の土地の価格を評価して決定します。固定資産税や都市計画税といった地方税を計算する際に使われます。評価額は3年ごとに評価替えが行われますが、その間も地価が大きく変動した場合には、評価額が修正されることがあります。これらの四つの価格、実勢価格、公示価格、路線価、固定資産税評価額は、それぞれ異なる目的と算出方法を持つため、同じ土地であっても価格が異なるのです。不動産の売買、相続、税金など、土地に関わる際には、これらの価格の持つ意味合いと役割を理解し、状況に応じて適切な価格を把握することが重要となります。そうすることで、不要な出費を抑えたり、有利な取引を行うことが可能になります。