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keystone:建築を支える要
石造りのアーチを作る際には、まず両側から石を少しずつ積み重ねていきます。この時、石はアーチ型に湾曲するように配置され、互いに押し合う力によって支えられています。しかし、アーチの頂上部分には隙間が空いてしまい、この状態ではアーチ全体が不安定です。そこで、最後に頂上部分に楔形の石をはめ込みます。これが要石、すなわち「キーストーン」です。
キーストーンは、その形から想像できるように、アーチ構造全体を締め付ける重要な役割を果たします。キーストーンがはめ込まれるまでは、アーチを構成する石材は不安定な状態で、わずかな外力でも崩れてしまう危険性があります。しかし、キーストーンが設置されることによって、アーチを構成する石材同士の圧力が均等に分散され、アーチ全体が安定します。これにより、アーチは自重や、その上に加わる荷重を支えることができるようになります。
もしキーストーンがなければ、アーチは崩落してしまうでしょう。キーストーンは、アーチ構造の最後のピースであると同時に、構造全体の安定性を確保する、まさに「要」となる重要な要素なのです。その重要性から、建築物だけでなく、組織や社会における重要な人物や要素を比喩的に「キーストーン」と呼ぶこともあります。それほど、キーストーンは構造の安定に欠かせない、なくてはならない存在なのです。