かぶり厚

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建物の寿命を守る、かぶり厚とは?

鉄筋コンクリート造の建物は、鉄筋という鋼でできた骨組みにコンクリートを被せて造られています。この鉄筋を覆っているコンクリートの厚みを「かぶり厚」といいます。かぶり厚は、建物の耐久性を左右する重要な要素です。 鉄筋は建物の強度を保つ上で欠かせないものですが、錆びやすいという弱点があります。そこで、コンクリートで鉄筋を覆うことで、錆から守っているのです。このコンクリートの覆いが、まさに「かぶり厚」の役割を果たします。かぶり厚が適切であれば、鉄筋は錆から守られ、建物の寿命も延びます。 もし、かぶり厚が不足しているとどうなるでしょうか。鉄筋が空気に触れやすくなり、錆びが発生しやすくなります。錆びた鉄筋は膨張し、周りのコンクリートに圧力をかけます。これがひび割れの原因となり、建物の強度が低下する恐れがあります。また、錆によって鉄筋自体も細くなり、本来の強度を発揮できなくなることもあります。これは建物の安全性に関わる重大な問題です。 反対に、かぶり厚が過剰な場合にも問題が生じます。必要以上にかぶり厚を厚くすると、コンクリートの中性化が鉄筋に到達するまでの時間が短縮されます。中性化とは、コンクリートが空気中の二酸化炭素と反応することでアルカリ性を失う現象です。アルカリ性のコンクリートは鉄筋の錆を防ぐ効果がありますが、中性化が進むとこの効果が失われ、鉄筋が錆びやすくなります。さらに、かぶり厚が厚すぎると、地震などの外力が加わった際にコンクリートにひび割れが生じやすくなります。これは、コンクリートの外側と鉄筋の位置が離れすぎているために、一体としての強度が低下することが原因です。 このように、かぶり厚は少なすぎても多すぎても問題を引き起こします。建物の耐久性と安全性を確保するためには、適切なかぶり厚を確保することが不可欠です。そのため、設計段階で建物の用途や環境などを考慮し、最適なかぶり厚を綿密に計算する必要があります。
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建物の寿命を守る:スラブかぶり厚の重要性

建物をしっかりと支える鉄筋は、コンクリートの中に埋め込まれることでその強さを発揮します。この鉄筋をコンクリートの表面から守る覆いの厚さを、「かぶり厚さ」と呼びます。特に床や天井などの水平な構造部材を「床版(スラブ)」と呼ぶため、床版におけるかぶり厚さを「床版かぶり厚さ」と言います。このかぶり厚さは、建物の耐久性を大きく左右する重要な要素です。適切なかぶり厚さを確保することで、鉄筋の腐食を防ぎ、建物の寿命を延ばすことに繋がります。 コンクリートはアルカリ性の性質を持っているため、鉄筋の腐食を抑える働きがあります。しかし、時間の経過とともに、空気中の二酸化炭素などがコンクリートにしみ込むことで、コンクリートのアルカリ性が失われることがあります。これを「中性化」と呼びます。また、地震や乾燥収縮などによってコンクリートにひび割れが発生することもあります。中性化やひび割れによってコンクリート内部に水分や酸素が侵入すると、鉄筋が錆びてしまう可能性があります。錆びた鉄筋は体積が膨張し、周囲のコンクリートを押し出すため、ひび割れをさらに大きくしたり、コンクリートが剥がれ落ちたりする原因となります。床版かぶり厚さは、このような事態を防ぐための重要な役割を担っています。十分なかぶり厚さを確保することで、鉄筋を外部環境から守り、建物の安全性を高めることができます。 かぶり厚さは、建物の用途や周辺環境、使用するコンクリートの種類などによって適切な厚さが定められています。例えば、海岸沿いの建物は、潮風による塩分の影響を受けやすいため、内陸部の建物よりも厚いかぶり厚さが必要となります。また、建物の構造計算においても、かぶり厚さは重要なパラメータとなります。設計者はこれらの条件を考慮し、建物の耐久性と安全性を確保するため、適切なかぶり厚さを設定します。適切なかぶり厚さを確保することは、建物を長く安全に使うために欠かせない要素と言えるでしょう。